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私とワタシ

大坂なおみ なぜカタカナ字幕?ワイドショーに視聴者が苦言 | 女性自身

記念すべき第一回目、何を書こうと思った矢先にこんなニュースが目に入りました。

これって、日本語の表記についてどんなイメージが共有されているかということを再認識する、興味深いニュースだなと感じました。

 

これで思い出したのが、最近私が大好きなアニメ「あそびあそばせ」の1話でオリビア枕草子を読む場面です。ご存じない方に簡単なご説明ですが、オリビアは見た目は西洋人ですが生まれも育ちも日本で完全日本語母語話者、第二言語なし、の状態である中学生の女の子です。

転校したばかりのオリビアは、新しくできた友人をからかうために日本語がよく分からないふりをしていて、いかにもな外国人アクセントで授業中に枕草子を朗読します。そこでは以下のような字幕が出ます。

 

春ハァ~アケボーノ YO!YO!白クナリユク山ギー WOW!

スコォーシアカリテ ムラサキダチタル雲ノ細クタナビキタール! 

 

私はこの場面が大好きで、YO!YO!と WOW!の部分で盛大に吹き出してしまいました。ステレオタイプな「カタコトの日本語」を、最近の子らしいポップな字幕にしてあるのがとってもツボ。ここには字幕無しには成立しない笑いがあります。

 

一方の大坂選手の字幕ですが、批判的な意見がネットなどで見られたということに、とても安心したのが私個人の感想です。大坂選手の話しているのをわざわざ外国語風に表記する必要ないじゃない!彼女のスピーチだってちゃんと日本語だし!というような。

教科書的な正しい発音だけが日本語ではないよ、というメッセージ。

ワイドショーの字幕を批判する人々は、きっとそんな寛容さを求める故に、メディアに対して物申す人たち。ワイドショーでカタカナ字幕を付けた人は、きっとオリビアの字幕を見て面白い思った私とそう変わらない感性を持っていらっしゃると想像します。

 

それと同時に、「外来語の表記はカタカナを使用する」という文科省の定めたものが根強く日本人の意識に浸透している事実も強く意識させられました。カタカナ表記は日本らしくないという意見、というより絶対条件。

もしかすると、字幕を見てた聴覚障害の方々は「ああ、発音はネイティブではないけれどもちゃんと日本語で会話しているんだな」というニュアンスを感じられたかもしれません。それはきっと、生き生きとした情報として、聴覚障害者の方々に受け入れられるのではないかなとも考えました。そう考えると、カタカナ表記も一概によろしくない、バカにしているものだ、とも言いきれなくなってきます。

 

文字を通してどう伝えるか、工夫をした者と苦々しく思う者。報道で出る字幕、アニメで出る字幕。紙媒体とはまた異なる、動画媒体での文字表現について再考させられるニュースであります。