日本語と日常、ときどき思索沼にずぶずぶと

日本語教師の、母親の、一個人の頭の中を綴ります

告示校の壁~キャリアってなんなのさ

日本語教育関係者には常識のキーワード、「告示校」というものがあります。正式名称は「法務省告示校」で、告示校となっている日本語学校への留学を理由にビザを取得することができるのです。

いろいろあって、私も新しく設立される日本語学校のスタッフに名を連ねることになったのですが、その為の申請書類に履歴書やら卒業証明やら資格証やら提出しなければなりません。日本語学校を設置するための管轄は文化庁になるのですが、その指定の履歴書の書式にある「日本語教育歴」というものは、あくまでも告示校での指導歴が対象になります。

 

振り返って私の経歴を見ると、これまでの日本語指導の相手は技術研修生か、日本の公立小中学校に在籍している外国人児童生徒であって、所属はフリーだったり、教育委員会の嘱託だったり。つまり、この、文化庁指定の書式に則って書くと、私の日本語教育歴は「ゼロ」になるのです。私と同じく入社した先生方も、大部分は海外の大学や日本語学校で教えていたので、10年教えていたとしても教育歴はおなじく「ゼロ」。

 

どうにも、解せません。日本語教育は今や様々な場面で必要とされているのに、日本語学校での指導経験しか「キャリア」とされない。

日本語教師の仕事は世界中どこでもできるけれど、日本国内で働くとなると逆に不自由な気もします。教務主任になれるのも、告示校で3年常勤としての経験がなければなることができません。今でこそ首都圏では日本語学校がたくさんありますが、地方都市へ行けば県に2、3校しかないなんてところもあるのでは。そうなると、在住地によって明らかにキャリアを積む機会が激減してしまいます。それ以前に、日本語教育を求めているのは日本語学校の生徒だけではないのに。日本語学校以外の場面でしか教えてこなかった自分には、とても歯がゆく思います。私の経歴がキャリアとして認められないのなら、私の教え子たちを、国はどういう存在だというのでしょうか。

 

不満を抱きつつも、日本に在住して日本語教師となる限りは、告示校での常勤実績はどうしてもほしいものです。それはそれ、これはこれで、私は今の職場での仕事を楽しく明るく、全うできればいいなと思います。

 

 

 


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